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「ありがとう」 と 「ごめんね」

子供の頃、親や周りの大人に一番最初に教えられる基本的なコミュニケーションが、「ありがとう」と「ごめんね」だと思います。
自分のストレートな気持ちを一番分かり易く伝える素敵な言葉だと思いますが、恥ずかしさや意地が邪魔してなかなか素直に口にできない時もあります。
そして時には、使い方と受け止め方を間違えると、最強の嫌味として効力を発揮する言葉・・・でもあるように感じます。
 同じ「ありがとう」でも、言い方と場面が違うと「ありがとう」じゃなくなってしまうことってないでしょうか・・・。
 そしてそこに本当に気持ちがあるのか無いのかも大事ですよね。
 とにかく口に出して言えばいいんだと、「ありがとう」と「ごめんね」を連発する。それはちょっといただけないですよね。

 突然私の母の話になりますが、10年程前、母はまだ40代という若さで脳梗塞で倒れ、右半身麻痺という身体になりました。
 利き手が右だった母は当初、生活のほぼ全般を自力でするのが困難で、私達家族の介助を必要とする場面がほとんどでした。
 食事の度、トイレの度、着替えの度・・・、常に「ごめんね、ごめんね」という母に、生意気にも私は「使い方間違ってるよ。ごめんねは、悪いことをしたときでしょ。こういう時は、ありがとうでいいでしょ。」と、母に説教をしました。正直、「ごめんね」を言われ続けるこちら側も辛く、うんざりだったからです。
 自分のせいで家族の手を煩わせているという気持ちに支配されていた母は、「ありがとう」に転換するには時間がかかりましたが、今ではすっかり「ありがとう」です。
 勿論、利き手交換の訓練やリハビリの甲斐あって、今では自分一人でできることも増え、調子の良い時には台所に立ち左手で包丁を握り、料理をすることもあります。
 でも今思うと、「ごめんね」ばかりの毎日では、気持ちが前向きになることも無く、今のように回復していなかったかも知れません。
 言葉には、プラスにもマイナスにも働く大きなパワーがあるのだと感じます。

もう1つ、私の友人から聞いた職場での「ありがとう」についての話ですが、彼女はチーフ職にあり数名の部下を束ねる立場にあります。
 どうやら彼女には、頭を悩ませる部下が二人いるようで、一人は(分かり易いように、以下タヌキさん)、いつも同じようなミスを繰り返し、何度言っても直らない。立場上、部下のミスをカバーしなければならないので穏便に処理する。その度にタヌキさんは、これでもかというくらいのオーバーリアクションで「ありがとう、助かったよ。」を連発。
部下だけれど年上のタヌキさんを目の前に、彼女も言いたいことをぐっと我慢し、次は気を付けてくれるだろうと微かな期待を抱くけれど結果は同じ。
タヌキさんの「ありがとう」は口先ばかりで、気持ちがこもっていないんですね。言われる側もありがた迷惑。こういう時は先に「ごめんなさい」だと思うのは私だけでしょうか?
もう一人は(以下、ウサギちゃん)、年下でまだ2年目だけれど飲み込みが早く仕事もできる。同僚の仕事のフォローにも気が回り、時々チーフの手伝いもしてくれるような、その中で二番手的なポジションをキープしているウサギちゃん。向上心があるのは良いことだけれど、入ってはいけない仕事の領域にまで無断で入る悪い癖があるそう・・・。
 ある日、私の友人はチーフとして当然の自分の仕事をしたまでなのに、ウサギちゃんに「ありがとう」と言われ、違和感を覚えたそうです。キツイ言い方をすると、下っ端の人からそう言われる筋合いは無い、上から目線の言い方で不快だな・・・というのが友人の言い分です。
 状況が少し分かりにくいですが、どうやらウサギちゃんは、自分の上司がやり遂げた仕事に対しての労いの気持ちを「ありがとう」で表現したつもりらしいのですが、友人はそう受け止めることができなかったのです。
 背景には、日頃ウサギちゃんがチラつかせる「私はできる人間オーラ」がありました。
 ウサギちゃんは勿論仕事もできるのですが、上から褒められ、同僚から頼りにされることで天狗になり、チーフとも張り合おうとする一面があったのです。
 手柄を取るために上手にズルをすることもあれば、言葉と表情からは真逆の意味で嫌味を吐いて、周りにプレッシャーを与えることもあるそうで、そんなウサギちゃんの本質がネックになり、「ありがとう」として伝わらなかったんですね。
 日頃の人間関係具合で言葉の意味は変わってしまうんだと、私も自分に置き換えて考えてみるとゾッとする思いでした。

一番シンプルな言葉のはずなのに、難しいと感じるのは日本人(日本語)だからでしょうか?
みなさんも、こんな経験はありませんか?



by art-ma-network | 2011-11-30 21:53 | スタッフのひとこと | Comments(0)